連続立体交差事業に対する堺市の取り組み(2020年11月更新)

開かずの踏切をなくそう

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堺市の取り組み

堺市の取り組み
    
2006年に政令指定都市となった堺市の連続立体交差事業について説明します。堺市は大阪市に次ぐ人口と面積を誇る都市です。

堺市ってどんなところ?

堺市は交通アクセスがよく大阪の繁華街でもある難波駅には急行を使えば10分ほどで到着することができます。堺市を中心にお部屋探しをサポートしている「NetWork中百舌鳥店」のホームページでは堺市をこのように紹介しています。
市内には、幾つかの交通網が在るのが特徴で、北野田駅から浅香山駅間を走る南海高野線、中百舌鳥駅から和泉中央駅間を走る泉北高速鉄道、浅香駅から鳳駅間を走るJR阪和線、七道駅と浜寺公園駅間を走る南海本線、そして浜寺駅と大和川駅間を走る阪堺電気軌道阪堺線などの路線が在ります。 生活には欠かせない鉄道路線が多く在るのが特徴で、特に堺市の湾岸エリアに近い場所には複数の路線が在り、利便性を高めているのです。
スーパーや病院などの施設や子育て支援も充実しています。特に子育て支援には力を入れており、医療費の一部を公費で助成する「子ども医療費助成制度」は対象年齢が0歳~15歳までと幅広いため、インフルエンザやおたふく、水疱瘡やノロウィルスといった伝染病にかかりやすい幼児や小学生、中学生のいる家庭にはとても心強い制度です。 ですが、子育て支援が充実しているということはそのぶんファミリー層からの人気も高いということなので、幼稚園や保育園の待機児童の割合も他の地域に比べると高くなっています。もし出産後、早期の職場復帰を考えているのであればあらかじめ待機児童について考えておきましょう。ある程度大きくなるまでは家庭で育児をする場合になるかもしれません。 また、堺市は病院の数も多く、各市の全国平均はおよそ62か所なのに対し堺市は197か所と3倍以上です。病院が多いため、医師や薬剤師の数も全国平均を上回っていますが、その反面、介護施設のカバー率は全国平均のおよそ半分ほどとだいぶ下回っています。 子どものいるファミリー層には住みやすいかもしれませんが、高齢者にとっては住みやすいとは言い切れません。

堺市の連続立体交差事業

堺市内を運行している南海本線のうち、難波駅から石津川駅までは高架化が完了していますが、石津川駅から羽衣駅まではまだ工事が完了していません。平成18年に連続立体交差事業の事業許可が下りましたが、工事が完了するのは平成30年とみられています。 この連続立体交差事業は堺市が主体となって南海電気鉄道と協力して行っています。石津川駅から羽衣駅区間には交通渋滞や踏切事故の原因となる踏切が7か所あり、特に常盤浜寺線は阪堺専と南海本線の踏切があるだけでなく、近くに大きな交差点もあるため、朝夕の通勤時間のラッシュはかなりの激しさです。そのため、電車に乗り遅れるのを防ぐため無理に踏切を渡ろうとして事故が発生してしまったことも少なくありません。 交通渋滞の解消と安全の確保、さらに周辺の道路整備や街の活性化を目的とした高架化には周辺の住民からも大きな期待を寄せられています。 また、この区間には登録有形文化財とされている諏訪ノ森駅や浜寺公園駅がありますが、この区間を高架化するとこれらの駅はどうなるのでしょうか? 今までは高架化に伴い、これまでの駅は取り壊されていましたが、この2つの駅は一般的な駅ではなく登録有形文化財ということもあり特別な配慮が必要なのではないかとの意見もあります。そのため、取り壊すのではなく保存する方向で考えられていますが、どういう形で保存するのかはまだ決まってはいません。

連続立体交差事業の工事が進んでいない理由

事業許可が下りたとはいえ、工事はなかなか進んでいません。その理由のひとつに莫大な費用があります。 高架化には莫大な費用がかかるため、自治体だけでなく南海電気鉄道会社と協力しながら工事を進めることになります。しかし、自治体の予算に余裕がない場合や鉄道会社の収益がなければ事業を進めることは難しくなります。 交通渋滞の解消や安全性の向上などから住民の期待が高い連続立体交差事業ですが、その期待に反して、なかなか工事が進まないのにはこういった背景があるからです。

事業の進捗と登録有形文化財の2駅の駅舎保存活用構想(2020年11月26日追記)

平成30年度の完了を目指して進めてきた事業ですが、事業工程の見直しが行われ、事業施行期間が令和9年度末まで延長となりました。期間の延長の理由として、堺市のHPでは、「土地境界の不確定や相続発生等による用地買収の長期化」と、「鉄道耐震基準の変更により高架橋の基礎形状が大きくなる等で、施工期間が増加」したことを挙げています。 土地境界の確定に関しては、所有者全員の立ち合いによる合意を得る必要があり、スムーズに進んでも1件の土地境界を確定する一連の手続きには2か月前後の期間を要します。そのなかで、予定を合わせるのが難しいケース、相続による所有者変更や持分分割による所有者増加のケースが多く発生すれば、合意を得て用地を買収するために期間が長期化してしまうのも納得できます。 登録有形文化財となっている2駅についてですが、諏訪ノ森駅西駅舎は大正8年建築、木造スレート葺き平屋建ての48平方メートル程度の小規模な駅舎です。入口上部のステンドグラスが特徴的で、現役で現存する木造駅舎として希少性の高い建築物です。保存活用方策としては、新駅舎と離して、新駅の出入口と近くなるように出入口を東側に向けて配置し、来場者の憩いの場として活用する方向で検討が進んでいます。 もう1駅の浜寺公園駅駅舎は明治40年建築、木造鉄板葺き平屋建てのハーフティンバー様式の建物です。現位置、現役で現存する最古級の木造駅舎として全国的にも非常に希少性の高い建築物です。保存活用方策としては、新駅舎に近接して配置し、中央部分は新駅舎のエントランス、両側部分は来場者の憩いの場として活用する方向で検討が進んでいます。

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全国に点在する開かずの踏切

日本全国にある開かずの踏切はおよそ600か所ですが、そのうち半数は東京都内にあります。また、その開かずの踏切の中でも特に踏切遮断時間が長い踏切は東京や大阪、名古屋に集中しています。踏切は列車だけでなく歩行者や自動車などさまざまな手段で通行することができるため、安全面を考慮して事故の原因となりうる開かずの踏切の改善は国土交通省からも義務付けられています。

連続立体交差事業とは?

開かずの踏切の解消に有効な連続立体交差事業は、線路を高架化もしくは地下化することで踏切自体を撤去する工事です。高架化には仮線方式、別線方式、直上方式の3つの方式がありますが、仮線方式や別線方式の場合は周辺の用地の確保が、直上方式の場合は最終列車の発車以降しか工事できないため夜間しか工事ができない、といった問題点もあり、工事が完了するまでにはかなりの時間が必要となります。

連続立体交差事業のメリット

連続立体交差事業によって線路が高架化されると、ホームの増設もできるため相互発着が可能になります。相互発着により同時に2本の列車がホームに乗り入れることができるため列車の運行本数を増やすことができ、満員電車の混雑の解消にもつながります。また、小田急線のように線路を地下化することで複々線化も可能になるため、急行と各駅停車が分けられ、よりスムーズに運行することができます。

京都市の取り組み

洛西口駅付近で行われている連続立体交差事業は交通渋滞の解消や地域の活性化を目的として行っているため、線路の高架化だけでなく街づくりもかねて自転車や歩行者用の関連側道工事も行っています。高架化の切替工事は完了し、工事前に比べると踏切の遮断時間もだいぶ短縮され、開かずの踏切によって引き起こされていた交通渋滞の問題もだいぶ改善されています。