採択基準は?
連続立体交差事業の採択基準とは?
線路を高架化もしくは地下化することで踏切を撤去する連続立体交差事業を行うにあたって、いくつかの基準をクリアする必要があります。連続立体交差事業は踏切の撤去という工事内容から鉄道事業者が行うものと思われがちですが、交通渋滞の解消や踏切によって分断されていた市街地の街づくりもかねているため、都道府県や政令指定都市が都市計画事業の一環として行っています。そのため事業主は都道府県や地方自治体となります。連続立体交差事業を行うにあたっての採択基準は以下の三点です。
・鉄道と幹線道路が2か所以上で交差する
・その幹線道路の中心部が350メートル以上離れている
・道路を同時に3か所以上で立体交差し、踏切を2か所以上撤去する
この三点の基準に該当しない場合は交通渋滞の解消にはつながらないとみなされ、工事を行っても効果が薄いと判断されます。また、国が補助をする場合は自動車の1日の交通量が2万台以上であること、街づくりを含めて10億円以上の規模であること、が採択基準として定義されています。
採択基準が緩和されることもある
ただし、開かずの踏切のように1時間のうち40分も遮断機が下りたままになっている踏切や踏切交通遮断量が1日5万台以上などのよう場合は採択基準も緩和されます。
具体的な事業費用は?
連続立体交差事業には莫大な費用がかかります。基本的にはガソリン税や自動車重量税を財源とした道路整備特別会計予算から出されます。
連続立体交差事業によって線路を高架化もしくは地下化することで交通渋滞が解消され、都市部の交通がスムーズになるため、全体の事業費のうちおよそ90%は地方自治体で負担します。そのうちの半分は国から交付され、残り半分を地方自治体で負担することになりますが、これは交通渋滞が解消されることによって直接恩恵を受ける地方自治体で負担する割合が決められています。
事業費の残り10%は実際に列車を走らせている鉄道事業者側が負担します。負担する割合は、東京都内であれば14%、人口が30万人未満なら4%といったように4段階に分けられています。これは大都市になればなるほど列車を使用する割合の人も多く、鉄道事業者のメリットも大きくなるため負担も大きいと考えられるからです。
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全国に点在する開かずの踏切
日本全国にある開かずの踏切はおよそ600か所ですが、そのうち半数は東京都内にあります。また、その開かずの踏切の中でも特に踏切遮断時間が長い踏切は東京や大阪、名古屋に集中しています。踏切は列車だけでなく歩行者や自動車などさまざまな手段で通行することができるため、安全面を考慮して事故の原因となりうる開かずの踏切の改善は国土交通省からも義務付けられています。
連続立体交差事業とは?
開かずの踏切の解消に有効な連続立体交差事業は、線路を高架化もしくは地下化することで踏切自体を撤去する工事です。高架化には仮線方式、別線方式、直上方式の3つの方式がありますが、仮線方式や別線方式の場合は周辺の用地の確保が、直上方式の場合は最終列車の発車以降しか工事できないため夜間しか工事ができない、といった問題点もあり、工事が完了するまでにはかなりの時間が必要となります。
連続立体交差事業のメリット
連続立体交差事業によって線路が高架化されると、ホームの増設もできるため相互発着が可能になります。相互発着により同時に2本の列車がホームに乗り入れることができるため列車の運行本数を増やすことができ、満員電車の混雑の解消にもつながります。また、小田急線のように線路を地下化することで複々線化も可能になるため、急行と各駅停車が分けられ、よりスムーズに運行することができます。
京都市の取り組み
洛西口駅付近で行われている連続立体交差事業は交通渋滞の解消や地域の活性化を目的として行っているため、線路の高架化だけでなく街づくりもかねて自転車や歩行者用の関連側道工事も行っています。高架化の切替工事は完了し、工事前に比べると踏切の遮断時間もだいぶ短縮され、開かずの踏切によって引き起こされていた交通渋滞の問題もだいぶ改善されています。